独立時の健康保険:任意継続・国民健康保険・美容の国保組合という3つの選択肢

会社員の美容師が独立するとき、健康保険には主に3つの選択肢があります。任意継続は退職日の翌日から20日以内という期限があり、加入期間は2年。美容の国保組合には、所得ではなく定額で保険料が決まるところがあります。傷病手当金の有無も含めて、公的機関と組合の公開情報をもとに整理します。

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この記事の根拠

この記事は公開情報8件をもとに作成しています(最終確認日 2026-09-17)。

出典一覧を見る
  1. 任意継続|給付と手続き|協会けんぽ (確認日:2026年9月17日)
  2. 保険料について|健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について|協会けんぽ (確認日:2026年9月17日)
  3. 傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ (確認日:2026年9月17日)
  4. 保険料について|東京美容国民健康保険組合 (確認日:2026年9月17日)
  5. 東京美容国民健康保険組合(お知らせ) (確認日:2026年9月17日)
  6. 国民健康保険料の計算方法|江戸川区 (確認日:2026年9月17日)
  7. 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)|厚生労働省 法令等データベース (確認日:2026年9月17日)
  8. 国民年金に加入するための手続き|日本年金機構 (確認日:2026年9月17日)

独立時の健康保険:任意継続・国民健康保険・美容の国保組合という3つの選択肢

サロンを辞めて独立すると、会社員のときに入っていた健康保険から外れます。次にどこへ入るかは自分で選ぶことになり、選択肢によって保険料の決まり方が根本から違います。

しかも、ひとつには20日という期限があります。開業準備の忙しい時期に重なるので、先に把握しておく価値のある項目です。

この記事では、公的機関と組合が公表している内容から、3つの選択肢を整理します。保険料や加入資格は加入先・自治体により異なるので、最終的には該当する窓口にご確認ください。

開業手続き全体は「美容所開設の手続き」(/articles/biyousho-kaisetsu-tetsuzuki-gyakusan/ )、税務署への届出は「税務署への届出と青色申告」(/articles/kaigyo-zeimusho-aoiro-shinkoku/ )で扱っています。

選択肢1:任意継続

いまの健康保険を、退職後も続ける仕組みです。

条件と期間

協会けんぽの案内によると、加入の条件は次のとおりです(出典: 協会けんぽ 任意継続 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3270/ )。

「退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あること」 「退職日の翌日から20日以内に手続すること」

加入できる期間は「2年間」です(出典: 同上)。

20日という期限が、最も注意すべき点です。 退職の直後は、保健所の手続き、物件、内装、税務署への届出と重なる時期です。過ぎると選べなくなるので、退職日を決めた時点でカレンダーに入れておく項目になります。

保険料

保険料は「退職時の標準報酬月額×お住まいの都道府県別保険料率(子ども・子育て支援金率を含む)」で計算されます(出典: 同上)。ただし上限があり、「退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた場合は、標準報酬月額は32万円で計算します」とされています(出典: 同上)。

そして重要なのが負担割合です。在職中は「事業所とご本人で保険料を半分ずつ負担」していましたが、退職後は「ご本人が全額負担することとなります」(出典: 協会けんぽ 保険料について https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat650/r321/ )。

退職時の標準報酬月額が32万円以下で保険料率も同じなら、本人が払う額はおおむね倍になります。 「今と同じ保険料で続けられる」と考えていると、ここでずれます。

保険料は月単位で計算され、日割りでの納付はできません(出典: 同上)。

資格を失うとき

任意継続が終わるのは、次のいずれかです(出典: 協会けんぽ 任意継続 同上)。

  1. 就職して他の健康保険の被保険者資格を取得したとき
  2. 保険料を納付期限までに納付しなかったとき
  3. 後期高齢者医療制度の被保険者資格を取得したとき
  4. 亡くなったとき
  5. 任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出たとき

2番に注意してください。 納付期限を過ぎると資格を失います。開業直後で資金繰りが読めない時期に、口座残高の管理が必要な項目がひとつ増えることになります。

期間中の病気・ケガに傷病手当金は出ない

もうひとつ、見落とされやすい点があります。

「任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません」

(出典: 協会けんぽ 傷病手当金 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html )

任意継続は「保険証が続く」仕組みであって、在職中から継続して傷病手当金を受けている場合などを除き、会社員の所得補償まで続くわけではありません。 独立後に働けなくなったときの備えは、別に考える範囲になります。

選択肢2:国民健康保険(市区町村)

住んでいる市区町村の国民健康保険に加入する方法です。

保険料は、年度(4月〜翌年3月)ごとに前年の所得などをもとに計算されます。算定方法や料率は市区町村ごとに異なります。

ここで効くのがタイミングです。独立した直後の年度の保険料は、会社員だった年の所得をもとに計算されます。つまり、

  • 独立1年目:会社員時代の所得が基準になるので、保険料が高く出やすい
  • 独立2年目:基準は引き続き前年の所得なので、年の途中で独立した場合などは、2年目もまだ会社員期間の給与所得を含む所得で計算されることがあります

収入が落ちる時期に保険料が高い、というずれが生じやすい構造です。任意継続と比べるときは、この1年目のずれを含めて比べる必要があります。

具体的な金額は市区町村の窓口で試算してもらえます。退職前に問い合わせておけば、任意継続と数字で比較できます。

選択肢3:美容の国民健康保険組合

美容業には、業種別の国民健康保険組合があります。ここが、他の2つと決定的に違う点を持っています。

保険料が「定額」

東京美容国民健康保険組合が公表している保険料は、所得に応じて変わらない定額制です(出典: 東京美容国民健康保険組合 保険料について https://kokuho-tokyobiyo.or.jp/hokenryou/ )。

同組合の保険料のページに掲載されている令和8年度(令和8年4月から)の保険料で、1人当たりの月額は次のとおりです(出典: 同上)。年齢の区分ごとに額が決まっています。

区分未就学児小・中・高校生相当〜39歳40歳〜64歳65歳〜74歳
事業主(均等割)--22,000円26,000円22,000円
従業員(均等割)--16,000円20,000円16,000円
同一世帯家族(人頭割)6,000円9,500円10,000円14,000円10,000円

同組合によると、この保険料は次の4つで構成されています(出典: 同上)。

  • 医療給付費:事業主は月額17,500円、従業員は月額11,500円、家族は月額5,500円、未就学児は月額2,000円(0歳〜74歳)
  • 後期高齢者支援金:月額4,000円(0歳〜74歳)
  • 子ども・子育て支援金:月額500円(令和8年度から徴収開始。毎年4月1日時点で18歳以上の組合員・家族から徴収)
  • 介護保険料:月額4,000円(40歳〜64歳)

40歳〜64歳の列の額が高いのは、介護保険料が加わるためです。65歳以上の方の介護保険料は、年金から天引きまたは居住地の市区町村に納付するとされています(出典: 同上)。保険料の納期限は毎月末(土日祝日の場合は翌営業日)です(出典: 同上)。

なお同組合は、お知らせで「令和8年4月より「子ども・子育て支援金」の徴収が始まります」と案内しています(出典: 東京美容国民健康保険組合 https://www.kokuho-tokyobiyo.or.jp/ )。上の額は令和8年度のものなので、加入する時点の保険料は組合に確認してください。

定額であることの意味

定額制は、所得が増えるほど有利になり、所得が少ないうちは不利になります。

  • 軌道に乗って所得が上がっても、保険料は変わりません。 市区町村の国保なら所得に応じて上がるところが、定額で止まります。
  • 逆に、開業初年度で所得が少ない時期には、割高になる可能性があります。

つまり**判断は「いまいくら払うか」ではなく、「何年で見て有利か」**になります。

また、家族の分が人頭割である点にも注意が必要です。同一世帯の家族も、1人当たりの月額で加算されます。家族構成によって総額が大きく変わります。

加入資格は組合ごとに違う

国保組合は、同種の事業・業務に従事し、組合の地区内に住所を有する人を組合員として組織され、組合の地区と組合員の範囲は組合の規約で定められます。 上に引いた数値も東京美容国民健康保険組合のものであり、他の組合には当てはまりません。

開業予定地を管轄する組合に、加入資格と保険料を直接確認してください。

年金のほうも変わる

健康保険と同時に、年金も変わります。会社員は厚生年金の被保険者ですが、20歳以上60歳未満で個人事業主として独立すると国民年金の第1号被保険者になります。

保険料の額と将来の給付が変わるので、健康保険と合わせて確認する項目です。手続きは住所地の市区町村の窓口で、退職日の翌日から14日以内に行います。

比べ方

  1. 退職日を決める。 任意継続の20日の起算日になります。
  2. 任意継続の保険料を試算する。 退職時の標準報酬月額(32万円が上限)×都道府県別保険料率(子ども・子育て支援金率を含む)。全額自己負担である点を必ず織り込みます。
  3. 市区町村の国保を試算してもらう。 独立1年目は会社員時代の所得が基準になる点に注意。
  4. 国保組合に問い合わせる。 加入資格があるか、定額いくらか、家族は何人分か。
  5. 3つを、1年目と2年目以降に分けて比べる。 所得の変化で有利不利が逆転します。
  6. 傷病手当金がどうなるかを確認する。 任意継続では、その期間中に発生した病気・ケガには出ません。
  7. 年金の切り替えも忘れない。

1〜4は、退職する前にできます。 退職後に調べ始めると、20日の期限のほうが先に来ます。

まとめ

  • 独立時の健康保険には、任意継続・市区町村の国民健康保険・業種別の国保組合という主に3つの選択肢があります。
  • 任意継続は「退職日の翌日から20日以内」に手続きが必要で、加入期間は2年間。退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間が要ります。
  • 任意継続の保険料は退職時の標準報酬月額(32万円が上限)×都道府県別保険料率(子ども・子育て支援金率を含む)。在職中は労使折半だったものが全額自己負担になるので、上限にかからなければ本人が払う額はおおむね倍になります。
  • 保険料を納付期限までに納付しないと、任意継続の資格を失います。
  • 任意継続の期間中に発生した病気・ケガには、傷病手当金は支給されません。 保険証が続くことと、所得補償が続くことは別です(在職中から継続して受けている場合を除く)。
  • 市区町村の国保は前年の所得が基準なので、独立1年目は会社員時代の所得で計算され、高く出やすい構造です。
  • 東京美容国民健康保険組合の保険料は定額制です。保険料のページに掲載の令和8年度の額で、事業主は月22,000円(〜39歳と65歳〜74歳。40歳〜64歳は介護保険料が加わり26,000円)。所得が増えても変わらない代わりに、所得が少ない時期は割高になり得ます。
  • 家族の分は人頭割で、1人ごとに加算されます。
  • 1年目と2年目以降で有利不利が逆転するので、両方で比べます。
  • 年金も、20歳以上60歳未満なら厚生年金から国民年金第1号に変わります。

ご利用にあたって:掲載内容は一般的な情報提供を目的としています。記載は2026年9月17日時点で公開されていた情報にもとづくもので、保険料率・保険料額・加入資格は年度や加入先により変わります。引用した国保組合の保険料は東京美容国民健康保険組合の例であり、他の組合には当てはまりません。 市区町村の国民健康保険料も自治体ごとに異なります。実際の金額と加入資格は、協会けんぽ、お住まいの市区町村、該当する国保組合の窓口にご確認ください。