開業資金と日本政策金融公庫:融資限度額7,200万円の制度で、実際に何を書くのか

美容室の開業資金を借りる選択肢として、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金があります。対象者は「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」、融資限度額7,200万円、設備資金は20年以内。制度の数値と、創業計画書に何を書くのかを公式情報をもとに整理します。

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この記事の根拠

この記事は公開情報5件をもとに作成しています(最終確認日 2026-09-17)。

出典一覧を見る
  1. 新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫 (確認日:2026年9月17日)
  2. 創業計画書(記入例)(美容業)|日本政策金融公庫 (確認日:2026年9月17日)
  3. 創業支援|日本政策金融公庫 (確認日:2026年9月17日)
  4. 各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】|日本政策金融公庫 (確認日:2026年9月17日)
  5. 美容師法|厚生労働省 法令等データベース (確認日:2026年9月17日)

開業資金と日本政策金融公庫:融資限度額7,200万円の制度で、実際に何を書くのか

美容室の開業は、道具を揃えるだけでは終わりません。物件と内装と什器が入ると、必要な資金の規模が変わります。 自己資金だけで足りない場合、借入の選択肢として最初に名前が挙がるのが日本政策金融公庫です。

この記事では、公庫が公表している制度の数値と、実際に提出する創業計画書に何を書くのかを整理します。融資の可否や条件は個別の審査によるもので、本記事は結果を保証するものではありません。 借入の判断はご自身で行ってください。

道具・什器の準備は「美容師の独立開業・開店準備で揃えるべき道具ガイド【個人装備編】」(/articles/dokuritsu-kaigyo-dougu-guide/ )と「サロンワゴン・チェアの選び方」(/articles/salon-wagon-chair-erabikata/ )で、開業手続きは「美容所開設の手続き」(/articles/biyousho-kaisetsu-tetsuzuki-gyakusan/ )で扱っています。

制度の数値

新規開業・スタートアップ支援資金の概要は、公庫が公表しているとおりです(出典: 日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html )。

項目内容
ご利用いただける方新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方(適正な事業計画の策定と遂行能力が必要)
資金のお使いみち新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額7,200万円
返済期間(設備資金)20年以内(据置期間5年以内)
返済期間(運転資金)10年以内(据置期間5年以内)
利率基準利率。一定の要件に該当する方が必要とする資金(原則として土地にかかる資金を除く)は特別利率A・B・C
担保・保証人「お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます」

(出典: 同上)

読み取れること

1つ目。「事業開始後おおむね7年以内」も対象です。 これから開業する人だけの制度ではありません。すでに開業していて、設備の入れ替えや2店舗目を考えている段階でも対象になり得ます。

2つ目。設備資金と運転資金で返済期間が倍違います。 設備資金は20年以内、運転資金は10年以内です。何を設備として、何を運転資金として申し込むかで、月々の返済額が変わります。内装工事や什器は設備、当面の家賃や仕入は運転資金、という切り分けになります。

3つ目。据置期間が5年以内あります。 据置期間は元金の返済を待ってもらえる期間です。開業直後は売上が立たないので、ここをどう設定するかが資金繰りに直接効きます。ただし据置期間中も利息はかかるので、長くすれば得というものではありません。

4つ目。担保・保証人は「相談」と書かれています。 公庫は、併用できる特例制度として経営者保証免除特例制度、創業支援貸付利率特例制度、賃上げ貸付利率特例制度を挙げています(出典: 同上)。条件を満たすかどうかは個別の相談になりますが、最初から「保証人が要る」と決めつける必要はないということです。

利率が下がる要件

基準利率のほかに特別利率A・B・Cがあり、要件に該当する方が必要とする資金(原則として土地にかかる資金を除く)に適用されるとされています。要件には、女性の方、35歳未満または55歳以上の方、認定特定創業支援等事業を受けて認定市区町村が発行する証明書を取得した方などが挙げられています(出典: 同上)。

自分が該当するかは、申し込む前に確認しておく項目です。

創業計画書に書くこと

公庫が公開している創業計画書の記入例(美容業)を見ると、記入が必要な項目は9つです(出典: 日本政策金融公庫 創業計画書(記入例)(美容業) https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyourei02_250401d.pdf )。

#項目
1創業の動機
2経営者の略歴等
3取扱商品・サービス
4従業員
5取引先・取引関係等
6関連企業
7お借入の状況
8必要な資金と調達方法
9事業の見通し(月平均)

(出典: 同上)

この一覧から、準備しておくべきものが逆算できます。

項目8「必要な資金と調達方法」

必要な資金として設備資金・運転資金の見積先と金額を、調達の方法として自己資金や借入の内訳・返済方法を書き、それぞれ合計を出す構成です(出典: 同上)。

つまり、物件・内装・什器・道具の見積もりが揃っていないと、この欄は埋まりません。 相見積もりを取っている段階では書けないので、先に見積もりを固めるのが順番になります。

什器の選定基準は「サロンワゴン・チェアの選び方」(/articles/salon-wagon-chair-erabikata/ )で扱いましたが、チェアのように図面を取り寄せないと仕様が確定しない道具があるので、見積もりを揃えるには時間がかかります。融資の相談から逆算して着手する必要があります。

項目9「事業の見通し(月平均)」

構成は次のとおりです(出典: 同上)。

  • 創業当初:売上高①、売上原価(仕入高)②、利益、各経費の内訳(人件費、家賃、支払利息、その他)
  • 1年後又は軌道に乗った後:同じ項目群

そして、各欄には根拠の説明を記入する必要があります(出典: 同上)。

ここが、美容室の場合いちばん具体的に書ける欄です。

  • 売上高の根拠:セット面の数、1日の施術可能人数、客単価、稼働率。これらは自分の技術と営業時間から積み上げられます。
  • 売上原価:薬剤や物販の仕入。カラー剤の消費量は、施術1件あたりで見積もれます。
  • 人件費:1人で始めるのか、スタッフを入れるのか。美容師である従業者が常時2人以上になるなら、管理美容師を置く必要があります(「管理美容師の資格要件」(/articles/kanri-biyoushi-shikaku/ ))。
  • 家賃:物件が決まっていれば確定値です。

「希望」ではなく「根拠」を書く欄なので、数字の出どころを説明できる形にしておく必要があります。

項目2「経営者の略歴等」と項目5「取引先・取引関係等」

美容師の場合、項目2にはそのまま実務経験を書けます。 様式には、勤務先名だけでなく担当業務や役職、身につけた技能等も書くよう注記があります(出典: 同上)。何年どこで働き、どんな施術を担当してきたか。これは他業種からの開業者にはない強みです。

項目5の「取引先・取引関係等」には販売先・仕入先・外注先を書く欄があり、美容室では**ディーラー(薬剤・商材の仕入先)**が中心になります。開業前に取引条件の目処を立てておくと、この欄が具体的になります。

相談の窓口

公庫は全国152支店に創業サポートデスクを設置しているとしています。創業支援のページでは、オンライン相談と来店しての相談が案内されています(出典: 日本政策金融公庫 創業支援 https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/index.html )。東京・大阪にはビジネスサポートプラザがあり、予約制で相談できるとされています(出典: 同上)。

創業計画書などの書式は、公庫のサイトからダウンロードできます(出典: 日本政策金融公庫 各種書式ダウンロード https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html )。

書けるところまで自分で埋めてから相談するのが、時間の使い方としては効率的です。埋まらない欄がどこかで、準備の不足が見えるからです。

進め方

  1. 自分が対象かを確認する。 これから開業する、または事業開始後おおむね7年以内。
  2. 特別利率の要件に該当するか確認する。 該当すれば利率が変わります。
  3. 見積もりを固める。 項目8が書けないと先に進みません。物件・内装・什器・道具。
  4. 設備資金と運転資金を切り分ける。 返済期間が20年と10年で違います。
  5. 事業の見通しを、根拠つきで作る。 セット面の数・客単価・稼働率から積み上げます。
  6. 創業計画書を書けるところまで埋めて、創業サポートデスクに相談する。
  7. 担保・保証人は相談項目。 経営者保証免除特例制度など、併用できる制度があります。

まとめ

  • 新規開業・スタートアップ支援資金の対象は「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」。これから開業する人だけの制度ではありません。
  • 融資限度額は7,200万円。返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)。
  • 設備資金と運転資金で返済期間が倍違うので、何をどちらで申し込むかが月々の返済額を変えます。
  • 担保・保証人は「相談」とされ、経営者保証免除特例制度などの併用可能な制度があります。最初から保証人が必要と決めつける必要はありません。
  • 特別利率A・B・Cがあり、女性の方、35歳未満または55歳以上の方などが要件に挙げられています。該当するか先に確認します。
  • 創業計画書は9項目。項目8「必要な資金と調達方法」は見積もりが揃わないと書けません。 見積もりを固めるのが先です。
  • 項目9「事業の見通し」は各欄に根拠の説明が必要です。セット面の数・客単価・稼働率など、数字の出どころを説明できる形にします。
  • 美容師の場合、項目2「経営者の略歴等」は実務経験そのものが書ける欄です。他業種からの開業者にはない強みになります。
  • 相談窓口として全国152支店に創業サポートデスクがあり、オンライン相談も案内されています。書式は公庫のサイトからダウンロードできます。

ご利用にあたって:掲載内容は一般的な情報提供を目的としています。記載は2026年9月17日時点で日本政策金融公庫が公開していた情報にもとづくもので、制度内容・利率・要件は変更される場合があります。融資の可否・金額・条件は個別の審査によるもので、本記事は結果を保証するものではありません。 筆者は金融機関の関係者ではなく、本記事は特定の金融機関・融資商品を推奨するものではありません。借入は返済義務を伴います。最終的な判断はご自身で行い、詳細は日本政策金融公庫の窓口にご確認ください。