美容師の道具
美容師が個人で開業するときの開業届と青色申告:2つの書類は期限が違う
美容室を個人で開業するとき、税務署に出す書類は2種類あり、期限が違います。開業届は開業した年分の確定申告期限まで、青色申告の承認申請は1月16日以後の開業なら開業日から2か月以内。青色申告特別控除65万円・55万円・10万円の要件の違い(令和9年分以後の見直しを含む)と、専従者給与・赤字の繰越しまで、国税庁の公開情報をもとに整理します。
- 出典10件
- 最終確認
- 公開
- 広告/PRあり
この記事の根拠
この記事は公開情報10件をもとに作成しています(最終確認日 2026-09-20)。
出典一覧を見る
- A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁 (確認日:2026年9月17日)
- No.2070 青色申告制度|国税庁 (確認日:2026年9月17日)
- 青色申告 はじめてみませんか?|国税庁 (確認日:2026年9月20日)
- A1-8 所得税の青色申告承認申請手続|国税庁 (確認日:2026年9月17日)
- No.2072 青色申告特別控除|国税庁 (確認日:2026年9月20日)
- No.2090 新たに事業を始めたときの届出など|国税庁 (確認日:2026年9月17日)
- 簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ(令和8年4月)|国税庁 (確認日:2026年9月17日)
- 税理士紹介センタービスカス 公式サイト (確認日:2026年9月17日)
- 弥生のかんたん開業届|起業・開業ナビ|弥生株式会社 (確認日:2026年9月20日)
- クラウド青色申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」|弥生株式会社 (確認日:2026年9月20日)
美容師が個人で開業するときの開業届と青色申告:2つの書類は期限が違う
美容所の開設手続き(保健所)と、税務署への届出は別の話です。保健所の検査が終わってひと息ついているうちに青色申告の申請期限が来るので、開業準備のチェックリストからいちばん抜けやすいのがこの2枚です。
しかも、2枚で期限が違います。 この記事では、国税庁が公表している内容から、何をいつ出すのかと、青色申告で何が変わるのかを整理します。税務の個別の判断については、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
保健所への手続きは「美容所開設の手続き」(/articles/biyousho-kaisetsu-tetsuzuki-gyakusan/ )、開業資金は「開業資金と日本政策金融公庫」(/articles/kaigyo-shikin-yuushi-kouko/ )で扱っています。
2枚の書類と、2つの期限
| 書類 | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで | 納税地を所轄する税務署長 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 事業開始等の日から2か月以内(1月16日以後に開業した場合) | 納税地を所轄する税務署長 |
開業届について、国税庁は提出時期を「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」としています(出典: 国税庁 A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm )。提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、その翌日が期限です。提出先は納税地を所轄する税務署長で、提出方法はe-Taxのほか、書面を持参または送付して提出することもできます(出典: 同上)。
青色申告の承認申請は、原則として「青色申告をしようとする年の3月15日まで」ですが、**その年の1月16日以後に新規開業した場合は「業務を開始した日から2か月以内」**とされています(出典: 国税庁 No.2070 青色申告制度 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm )。
期限の読み方
2つの期限がずれていることが、実務上のポイントです。 先に期限が来るのは、青色申告の承認申請のほうです。
- 開業届だけ出して青色申告の申請を忘れると、その年は白色申告になります。 翌年分から青色申告にするには、翌年の3月15日までに申請します。
- 逆に言えば、同時に出してしまえば間違いません。 どちらも納税地を所轄する税務署長に提出する書類です。
「あとで考える」が最も高くつく場面です。開業日を決めたら、その場で2枚とも用意するのが確実です。
開業日はいつか
開業届に書く「事業開始の日」をいつにするかで、青色申告の申請期限(2か月以内)の起点と、開業届の期限の基準になる年が決まります。美容室の場合、保健所の検査確認済証の交付日、内装工事の完了日、実際に営業を始めた日など、候補が複数あります。
どの日を開業日とするかは自分で決めて記載する形式ですが、期限の基準になるので、後から動かせるものとして扱わないほうが安全です。判断に迷う場合は税務署に確認してください。
青色申告で変わること
国税庁のパンフレットは、青色申告の主な特典を3つ挙げています(出典: 国税庁 青色申告 はじめてみませんか? https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kichou01.pdf )。
- 所得金額から最高65万円を差し引くことができる
- 配偶者等に支払う給与を必要経費に算入することができる
- 赤字を前年や翌年の所得金額から差し引くことができる
1. 青色申告特別控除
控除額は3段階で、要件が違います(出典: 同上、および 国税庁 No.2070 同上)。
| 控除額 | 要件 |
|---|---|
| 最高65万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付。加えて、e-Taxによる申告、または優良な電子帳簿の保存 |
| 最高55万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表および損益計算書を添付。期限内申告 |
| 最高10万円 | 上記以外の青色申告者(簡易な記帳でも可。損益計算書の添付は必要) |
65万円と55万円の差は、記帳の方式ではなく、e-Taxによる申告か優良な電子帳簿の保存かです。 どちらも複式簿記が前提で、そのうえでどちらかを満たすかどうかという一点。会計ソフトを使って電子申告するなら、この10万円は取りやすい差です。
10万円と55万円の差は、主に記帳の方式です。 簡易な記帳か、複式簿記か。国税庁は、簡易な記帳として現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を挙げています(出典: 国税庁 No.2070 同上)。複式簿記の場合は仕訳帳と総勘定元帳です(出典: 国税庁 パンフレット 同上)。
なお、令和9年分以後の所得税については見直しが決まっています。国税庁は、複式簿記かつe-Taxで送信する場合に65万円、これに加えて一定の要件を満たす優良な電子帳簿を作成・保存している場合に最大75万円の控除を受けられるとしています。また、簡易な簿記で記録している方のうち、前々年分の事業所得等の収入金額が1,000万円を超える方は、10万円の控除が適用できなくなります(出典: 国税庁 簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0026004-012.pdf )。開業が2026年でも、2027年分からはこの見直し後の要件で考えることになります。
美容室の場合、現金と電子決済が混在し、物販の在庫もあるので、どのみち帳簿は必要になります。最初から複式簿記に対応した会計ソフトを入れるほうが、あとから切り替えるより手間が少なくなります。
記帳や決算書・申告書の作成を自分で進めるか、税理士に依頼するかも、開業時に決めておきたい分岐です。依頼を検討する場合、税理士紹介センタービスカス(運営:株式会社ビスカス)は、個人事業・中小企業から上場企業までを対象に税理士を紹介し、相談・紹介料等は無料と公式サイトで案内しています。税理士に支払う報酬は紹介料とは別なので、依頼内容ごとに見積もりで確認してください。
2. 青色事業専従者給与
生計を一にする配偶者やその他の親族(15歳未満の人を除く)で、専らその事業に従事している人に支払う給与について、届け出た範囲内で、労務の対価として相当と認められる金額を必要経費にできるとされています(出典: 国税庁 パンフレット 同上)。
事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。期限は必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合などは、その日から2か月以内)です(出典: 同上)。家族に手伝ってもらう前提なら、これも開業時の書類に加わります。
3. 純損失の繰越し
赤字が出た場合、「翌年以後3年間にわたって、順次各年分の所得金額から差し引くことができます」とされています(出典: 同上)。また、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰越しに代えて、前年分の所得金額に繰り戻して控除し、前年分の所得税の還付を受けることもできます(出典: 同上)。前年に青色申告をしていない開業初年度は、この繰戻しの条件に当たりません。
開業初年度は赤字になりやすいので、この特典は実際に効く場面が多い項目です。内装や什器の減価償却が始まり、まだ客数が積み上がっていない時期にあたります。
帳簿の保存期間
国税庁は、帳簿や書類の保存期間を「原則として7年間」とし、書類によっては「5年間でよいものもあります」としています(出典: 国税庁 No.2070 同上)。
開業時に決めておくと後が楽なのは、保管の形式です。紙で残すのか、電子で残すのか。優良な電子帳簿保存を選ぶなら65万円控除の要件にも関わるので、会計ソフトを選ぶ時点で決まる話になります。
開業時にやることの順番
- 開業日を決める。 両方の期限の基準になります。
- 開業届を用意する。 開業した年分の確定申告期限まで。
- 青色申告承認申請書を同時に用意する。 1月16日以後の開業なら、開業日から2か月以内。別々に出そうとしないこと。
- 家族に手伝ってもらうなら、青色事業専従者給与に関する届出書も。
- 会計ソフトを決める。 複式簿記に対応しているか、e-Taxに対応しているか。65万円控除の要件に直結します。
- 帳簿の保管方法を決める。 原則7年です。
開業届と青色申告承認申請書を自分で作る場合、書類作成サービスを使う方法があります。弥生のかんたん開業届は、画面に沿って操作するだけで開業届を含む必要書類を作れるサービスで、すべての機能が無料で利用できると案内しています。作成できる書類には、個人事業の開業・廃業等届出書と、青色申告を選択した場合の所得税の青色申告承認申請書が含まれます。パソコンでもスマホでも書類作成が可能と案内していますが、インボイス登録申請書は対象外です。作った書類の提出先と期限は、上で整理したとおり自分で確認してください。(出典: 弥生のかんたん開業届)
手順5の会計ソフトについては、やよいの青色申告 オンラインが、簿記知識がなくても日付や金額などを入力するだけで青色申告に必要な複式簿記帳簿が自動作成でき、直接e-Taxによる申告が可能だと案内しています。料金プランはサポート内容に応じて3つあり、機能はすべて同じとされています。無料期間や年額は変わることがあるので、申込み前に公式サイトで確認してください。(出典: やよいの青色申告 オンライン)
なお、国税庁は、税務署以外にも都道府県税事務所などへの届出書等の提出が必要となる場合があるとしています(出典: 国税庁 No.2090 新たに事業を始めたときの届出など https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm )。必要な届出と様式は、開業する自治体で確認してください。
まとめ
- 税務署に出す書類は2枚で、期限が違います。開業届は開業した年分の確定申告期限まで、青色申告の承認申請は事業開始等の日から2か月以内(1月16日以後の開業の場合)。
- どちらも納税地を所轄する税務署長に、e-Taxまたは書面で提出できます。
- 青色申告の申請を忘れるとその年は白色申告になります。同時に出すのが確実です。
- 青色申告特別控除は65万円・55万円・10万円の3段階。65万円と55万円の差はe-Taxによる申告または優良な電子帳簿の保存、10万円と55万円の差は主に記帳の方式(簡易記帳か複式簿記か)です。令和9年分以後は、複式簿記+e-Taxで65万円、さらに優良な電子帳簿で最大75万円などへの見直しが決まっています。
- 生計を一にする配偶者や15歳以上の親族で専ら事業に従事する人への給与を経費にするには、事前に青色事業専従者給与に関する届出書が必要です。
- 赤字は翌年以後3年間繰り越せます。開業初年度に効く特典です。
- 帳簿の保存は原則7年間。保管の形式は、会計ソフトを選ぶ時点で決まります。
- 税務署以外への届出(都道府県税事務所など)が必要な場合があります。自治体で確認してください。
届出は自分で出しつつ、記帳や確定申告は税理士に任せたい場合は、紹介サービスで相談先を探す方法もあります。紹介を受けるかどうか、どの事務所に依頼するかは、依頼内容と見積もりを確かめてから決めてください。
ご利用にあたって:掲載内容は一般的な情報提供を目的としています。記載は2026年9月17日時点で国税庁が公開していた情報にもとづくもので、税制は改正される場合があります。筆者は税理士ではなく、本記事は個別の税務相談に応じるものではありません。具体的な申告内容・提出書類については、所轄の税務署または税理士にご確認ください。