サロンワゴン・チェアの選び方:什器の要件は半分が衛生管理要領で決まっている

開業時の什器選びは、デザインや価格より先に「衛生管理要領が求める機能を満たすか」で決まります。消毒済みと未消毒を区別する収納、ふた付きの汚物箱、紫外線消毒器の85μW/cm²という基準まで、厚生労働省の通知に具体的に書かれています。メーカーが公表しているチェアの寸法とあわせて整理します。

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この記事の根拠

この記事は公開情報6件をもとに作成しています(最終確認日 2026-09-17)。

出典一覧を見る
  1. 理容所及び美容所における衛生管理要領について(昭和56年6月1日環指第95号)|厚生労働省 法令等データベース (確認日:2026年9月17日)
  2. 「理容所及び美容所における衛生管理要領」等の一部改正について(令和6年6月26日 健生発0626第6号。別紙1は新旧対照表、改正後全文を収録)|厚生労働省 (確認日:2026年9月17日)
  3. 理容・美容|厚生労働省 (確認日:2026年9月17日)
  4. LUAR|チェア|製品情報|タカラベルモント (確認日:2026年9月17日)
  5. スタイリングチェア シリーズ一覧|タカラベルモント (確認日:2026年9月17日)
  6. 美容師法(昭和32年6月3日 法律第163号)|厚生労働省 法令等データベース (確認日:2026年9月17日)

サロンワゴン・チェアの選び方:什器の要件は半分が衛生管理要領で決まっている

開業準備で什器を見ていると、判断の軸がデザインと価格に寄っていきます。ただ、什器に求められる機能の半分は、すでに国の通知に書かれています。

理容所及び美容所における衛生管理要領は、施設と設備について16項目を挙げていて、そのうちいくつかは「どんなワゴンを買うか」に直接対応します。この記事では、その要件を先に押さえてから、メーカーが公表しているチェアの仕様をどう読むかを整理します。特定の商品を推奨するものではありません。

開業手続きそのものの流れは「美容所開設の手続き」(/articles/biyousho-kaisetsu-tetsuzuki-gyakusan/ )で扱っています。

先に読むもの

衛生管理要領の本体は昭和56年6月1日の通知(環指第95号)です(出典: 厚生労働省 理容所及び美容所における衛生管理要領について https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta5155&dataType=1&pageNo=1 )。厚生労働省の「理容・美容」のページには、令和6年6月26日の一部改正通知もあわせて掲載されています(出典: 厚生労働省 理容・美容 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000123853.html )。以下の引用は、改正後の要領の本文で文言を確認したものです。

ワゴンに求められる機能は、条文から出てくる

「第2 施設及び設備」のうち、什器の選定に直接効く項目を抜き出します(出典: 厚生労働省 理容所及び美容所における衛生管理要領 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta5155&dataType=1&pageNo=1 )。

項内容
第2の7作業場には、適当な広さの器具等を消毒する場所を設けること(消毒室を設けることが望ましい)
第2の13作業に伴って出る汚物、廃棄物を入れるふた付きの汚物箱又は毛髪箱等を備えること
第2の14皮膚に接する器具類を、消毒済みのものと未消毒のものを区別するために必要な収納ケース等を備えること
第2の15器具類、布片類及びタオル等を消毒する設備又は器材を備えること
第2の16器具類及び布片類は、十分な量を備えること

この5つが、ワゴンと周辺什器の仕様書になります。

第2の14 が、ワゴン選びの中心

いちばん効くのが第2の14です。

「皮膚に接する器具類を、消毒済みのものと未消毒のものを区別するために必要な収納ケース等を備えること」

同じことは管理の側でも繰り返されていて、「洗浄及び消毒済みの器具類は、使用済みのものと区別して、収納ケース等に保管すること」とされています(出典: 同上、第3の1(14))。

つまり、**ワゴンに求められるのは「たくさん入ること」ではなく「区別できること」**です。

  • 引き出しや段が、消毒済み用と未消毒用に分けられるか。
  • 分けたことが、見た目や配置で判別できるか。ラベルを貼るのか、段で分けるのか。
  • 1段しかないワゴンは、それ単体では消毒済みと未消毒を分けにくくなります。 別に収納ケースを併用する前提になります。

商品ページには「収納力」や「引き出し◯段」と書かれていますが、開業の側で読むべきは段数そのものではなく、その段数で消毒済みと未消毒を分けられるかです。

ふた付きであること

第2の13は、汚物箱・毛髪箱についてふた付きを求めています。ワゴン一体型のダストボックスを選ぶ場合、ここが確認項目になります。

「ワゴンにゴミ箱が付いている」だけでは足りず、ふたがあるかを見ます。

消毒設備の数値基準

消毒の器材についても、管理の項に具体的な数値があります。

紫外線消毒器は、「常に85μW/cm2上(原文ママ)の紫外線照射が得られるように管理すること(紫外線灯は、3,000時間以上使用すると、その出力が低下することがあるので、適宜取り替えることが望ましい。)」

(出典: 同上、第3の1(13))

85μW/cm²という照射の基準が明記されているので、紫外線消毒器を選ぶときは、この照射強度が公表されているかが確認項目になります。公表がなければ、基準を満たしているかを自分で確認できません。

さらに、3,000時間以上使用すると出力が低下することがあるので適宜取り替えることが望ましい、とされています。開業時に本体を買って終わりではなく、ランプの交換部品が入手できるかまで見ておく項目だ、ということです。1日8時間点灯するとして、3,000時間はおよそ1年強にあたります。

消毒方法の区分そのものは「理美容器具の消毒と衛生管理の基本」(/articles/kigu-shoudoku-eisei-kanri/ )にまとめました。

施設側の制約が、什器のサイズを決める

什器の大きさは、施設の条件と一緒に決まります。関係する項目は次のとおりです(出典: 同上)。

  • 第2の6:作業場は「作業及び衛生保持に支障を来たさない程度の十分な広さ」を有すること。
  • 第2の8:作業場の床及び腰張りは、コンクリート、タイル、リノリウム、板等の不浸透性材料を使用し、清掃が容易に行える構造であること。
  • 第3の1(1):施設は1日1回以上清掃すること。
  • 第3の1(3):作業場内に不必要な物品を置かないこと。

床が不浸透性で、毎日清掃する前提なので、キャスターで動かせるか、床との隙間を掃除できるかが実務上の判断軸になります。脚が床に密着する什器は、清掃のたびに動かす手間が発生します。

また、第3の1(3)の「不必要な物品を置かない」は、収納を増やして物を溜め込む方向とは逆向きの要求です。ワゴンは大きいほどよい、とはならないということです。

チェアで公表されている仕様

チェアのほうは、メーカーが寸法を公表しています。

タカラベルモントのLUARは、樹脂ステップ仕様で715×1480×870〜1150mm、背もたれは最大175°までリクライニングすると公表されています(出典: タカラベルモント LUAR https://www.tb-net.jp/product/chair/multimenu/luar.html )。

この表記から読み取れることが2つあります。

1つ目。高さが「870〜1150mm」と幅で書かれているのは、高さが変わる仕様だと読めます(製品ページに昇降方式の記載はありません)。 下限と上限の両方が、自分の身長と施術の姿勢に合うかを見ます。上限だけを見て選ぶと、低くしたときに合わない可能性があります。

2つ目。奥行1480mmが、倒した状態を含む数字かどうかは、製品ページからは分かりません。 LUARは「フルフラット機構」をうたうチェアなので、倒したときに必要な前後のスペースが、設置間隔を決めます。図面を引くときは、寸法図で倒したときの寸法を確かめます。

一方、座面高、昇降方式、質量、電源仕様は、この製品ページには記載がありません(2026年9月17日に確認した範囲)。製品ページには「寸法図」へのリンクがあります(出典: 同上)。

スタイリングチェアのシリーズ一覧ページも同様で、20を超えるシリーズ名が並んでいますが、昇降方式・座面高・寸法・質量といった数値は掲載されていません(出典: タカラベルモント スタイリングチェア シリーズ一覧 https://www.tb-net.jp/product/chair/styling/series.html )。

つまり、チェアはウェブの一覧ページだけでは比較できません。 図面かカタログを取り寄せる、という手順が必要な道具だということです。これはシザーやブラシと大きく違う点です。

決める順番

  1. 区別できる収納を確保する。 消毒済みと未消毒を分けられるか。ワゴン単体で足りなければ、収納ケースを併用する前提で数えます。
  2. ふた付きの汚物箱・毛髪箱を入れる。 ワゴン一体型なら、ふたの有無を確認します。
  3. 消毒器材を決める。 紫外線消毒器なら、85μW/cm²以上の照射が得られるか確認できる情報があるか、ランプの交換部品が入手できるか。
  4. 床の清掃を止めない形にする。 1日1回以上の清掃が前提なので、動かせるか、下を掃除できるか。
  5. チェアは図面で決める。 ウェブの一覧では数値が出ません。倒したときの奥行で設置間隔を引きます。
  6. 収納を増やしすぎない。 「不必要な物品を置かない」という要求と逆方向です。

実際に求められる内容は、都道府県(保健所を設置する市・特別区を含む)の条例や、保健所の指導にも左右されます(出典: 厚生労働省 法令等データベース「美容師法」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=79081000&dataType=0&pageNo=1 )。着工前に管轄の保健所へ図面を持って相談するのが確実です。

道具全体の優先順位の考え方は「美容師の独立開業・開店準備で揃えるべき道具ガイド【個人装備編】」(/articles/dokuritsu-kaigyo-dougu-guide/ )で整理しています。

まとめ

  • 什器に求められる機能の半分は、衛生管理要領に書かれています。デザインと価格はその後です。
  • **ワゴンの中心要件は「区別できること」**です。消毒済みと未消毒を分ける収納ケース等を備えること、と明記されています。収納力ではありません。
  • 1段しかないワゴンは、単体では消毒済みと未消毒を分けにくくなります。別の収納との併用が前提になります。
  • 汚物箱・毛髪箱はふた付きが求められます。一体型ワゴンを選ぶなら確認項目です。
  • 紫外線消毒器は常に85μW/cm²以上の照射が得られるように管理することとされています(要領の原文の表記は「85μW/cm2上」)。照射強度が公表されているかを見ます。3,000時間以上使用すると出力が低下することがあり適宜取り替えることが望ましいとされているので、交換部品の入手性も確認項目です。
  • 床は不浸透性材料で1日1回以上清掃する前提です。動かせるか、下を掃除できるかが実務の軸になります。
  • 「作業場内に不必要な物品を置かない」という要求があるため、ワゴンは大きいほどよいとはなりません。
  • チェアは、ウェブの一覧ページに昇降方式・座面高・質量が載っていません。図面かカタログを取り寄せて比べる道具です。
  • 公表されている寸法が倒した状態を含むかは、製品ページからは分かりません。設置間隔は寸法図で倒した状態を確かめて引きます。

ご利用にあたって:掲載内容は一般的な情報提供を目的としています。記載は2026年9月17日時点で公開されていた通知・製品情報にもとづくもので、変更される場合があります。都道府県等の条例や保健所の指導により、実際に求められる設備が異なる場合があります。開業にあたっては必ず管轄の保健所にご確認ください。

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ここまで整理した観点で実物を比べたい場合は、Amazonや楽天市場の検索結果で段数や寸法の表記、価格帯を眺めると相場感がつかめます。特定の商品をおすすめするものではありません。

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